情報工房zukayer

じょうほうこうぼうズカイヤー 。Shimoda Yuji 元企業の戦略企画担当。メディアの動向と軍事情報ネットワークを研究中。

2020年末、米国ビデオ業界の主流、いよいよネット放送へ

 米国通信事業者、AT&TIPTV・衛星・ネット放送)のビデオサービスは、前年同期比326万の純減。インターネットサービスも前年同期比1.9万の純減。スカパー!の加入者約300万がこの1年間で消えたくらいの大きさだ。特に純減しているのは2015年に買収した衛星放送のDirecTV事業だ。買収時約2千万あった加入者が5年間で半減したと思われる。

 同じく通信事業者のVerizonのビデオサービスは、前年同期比30万の純減。インターネットは31万の純増をした。

米国最大のケーブルテレビ事業者、Comcastはビデオ前年比141万の純減により、加入数は1,985万加入となり、2千万の大台を割った。インターネットは197万件の純増があり、昨年の第3四半期(9月末)に加入数3千万を突破した。ネット放送へ転換に拍車がかかる。

ジョン・マローンが率いるリバティを親会社にもつチャーター・コミュニケーションズのビデオサービスは、前年同期比5.6万の純増でコードカッティングに打ち勝った。インターネットサービスは222万の大幅な純増をし、2,900万加入に迫っている。

ケーブルテレビ事業者は着実にインターネットサービス加入者の獲得に成功している。

他方、通信事業者は1984年のAT&T解体により地域会社に分割されたため、全米レベルの光ファイバーの展開が遅れた。また、携帯電話事業者間の激しい競合のために、地域の光ファイバー投資が抑制され、固定インターネットサービスにおいてCATV事業者に遅れをとった。

昨年から本格化したDisney+、Apple TV+などの*「バーチャルMVPD」との競合と、新型コロナによる影響が既存の*MVPD」の存在を脅かしている。

 

2020年第4四半期 (前年同期比)

AT&T IPTV、衛星、ネット放送)

 ビデオ      △326.1万加入

 インターネット △1.9万加入

Verizon IPTV

 ビデオ      △30.2万加入

 インターネット +30.9万加入

Comcast CATV

 ビデオ      △140.8万加入

 インターネット +197.1万加入

Charter Com. CATV

 ビデオ      +5.6万加入

 インターネット +221.5万加入

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2020年末、米国ビデオ・インターネットサービス加入実績

*バーチャルMVPDとは? Virtual Multi channnel Video Programming Distributors

すでにユーザー宅に引かれているインターネット回線を利用してビデオサービスを行うため、アンテナなどの設置費用やセットトップボックスが必要ないので安価にサービスができる。

MVPDとは?    Multi channnel Video Programming Distributors

旧来のペイテレビサービス。

衛星放送会社は、ユーザー宅にパラボラアンテナとセットトップボックスを設置する工事と装置の費用が必要。IP TV放送会社やCATV会社は光ファイバー同軸ケーブルの回線を引き、セットトップボックスを設置する工事費と装置の費用が必要となる。そのため、価格競争に弱く、「コードカッティング」が続いている。