情報工房zukayer

じょうほうこうぼうズカイヤー 。Shimoda Yuji 元企業の戦略企画担当。メディアの動向と軍事情報ネットワークを研究中。

2. 朝日新聞社のメディア支配

朝日新聞社テレビ朝日ホールディングス

読売グループと同様に、新聞社がテレビ局を設立して支配する典型である。

テレビ朝日ホールディングスの大株主は、朝日新聞社、社主村山家の美術品を収蔵している香雪美術館、九州朝日放送朝日新聞文化財団の4者で、合計約35%の議決権を持っている。

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テレビ朝日を巡る資本関係

20144月に認定放送持株会社、「テレビ朝日ホールディングス」を設立し、ネットワーク再編を進めている。テレビ朝日をキーとするANN:朝日ニュース・ネットワークは全国26のテレビ局で構成されている。そのうち支配下にあるテレビ局・認定持株会社の関係会社は20社あり、連結子会社1社(テレビ朝日)と持分法適用関連会社9社を含む。各局への出資は、主にテレビ朝日ホールディングス朝日新聞社2社で行われており、2社の議決権合計は20社全てにおいて支配の基準である3分の1を超えている。

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朝日新聞グループの支配下にあるテレビ局

 支配下にないテレビ局は6社ある。近畿広域の朝日放送、福岡県の九州朝日放送、資本が競合するクロス配信局2社などである。広島では支配2社が議決権の約25%を確保している。

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支配下にないネットワーク局

今後の展開はどうか?

今後のメディア展開に影響を与える5Gでは、2008125日、KDDI朝日新聞社、当時のテレビ朝日3社による業務提携の合意がある。KDDIとはauビデオパス 、関連会社ショップチャンネルの通販番組の放映などで連携している。

インターネット放送では(株)サイバーエージェントAbema TVを運営している。

朝日グループはテレビ朝日ホールディングスを中心に、関係会社20社全てが支配の基準である3分の1を超える議決権を持っている。強力な結束ではあるが、去年4月に認定放送持株会社となった近畿広域の朝日放送グループホールディングスや福岡の九州朝日放送の動向が注目される。

1. 読売新聞社のメディア支配

読売新聞社日本テレビホールディングス

日本メディアの特徴、新聞社がテレビ局を設立して支配する典型が読売新聞グループである。日本テレビホールディングスは、読売新聞グループ本社による直接出資と読売新聞東京本社讀賣テレビ放送を通じて出資を受けている。

 

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読売新聞と日本テレビホールディングス

201210月に認定持株会社日本テレビホールディングスを設立し、ネットワーク再編を進めている。日本テレビをキーとするNNN:ニッポン・ニュース・ネットワークは全国30のテレビ局で構成されている。

そのうち支配下にあるテレビ局・認定持株会社の関係会社は18社あり、連結子会社1社(日本テレビ放送網)と持分法適用関連会社5社を含んでいる。各局への出資は、認定放送持株会社である日本テレビホールディングス読売新聞グループ本社讀賣テレビ放送日本テレビ小鳩文化事業団、読売光と愛の事業団により行われている。グループの議決権合計で、支配の基準である3分の1を超えるテレビ局は14社ある。

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日本テレビホールディングス支配下にあるテレビ局

 支配下にないテレビ局は12社あり、1960年前後に設立されたラジオ・テレビ兼営の9社とクロス局3社である。

そのうち競合する新聞事業の関係から8社は距離をおいていると思われる。

青森放送東奥日報秋田放送秋田魁新報、山形放送・山形新聞山梨放送山梨日日新聞四国放送徳島新聞社、南海放送愛媛新聞社、以上8社が該当する。

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NNN加盟社で支配下にないテレビ局

今後の展開はどうか?

Gに向けた携帯電話の関係では、20062月9日にNTTドコモと業務提携契約を結んでいる。インターネット放送ではHULU(フールー)を運営するHJホールディングスを20144月に買収し、今年の3月末には200万加入を突破したと公表している。

読売新聞グループ日本テレビホールディングスを中心に強固な結束を維持し、日本の主要ブロックである東京、名古屋、大阪、福岡、札幌、仙台、広島、全てを押さえている。



 

地上波テレビネットワークの現在。

地上波テレビネットワークの現在。

2008年4月、メディア再編をめざし導入された認定持株会社は10グループになった。

TBS系ネットワークのJNNでは、キー局TBS以外に4社が認定持株会社を設立した。

最大のテレビ関係会社数をもつ朝日新聞社テレビ朝日系のANNでは、昨年4月に関西広域の朝日放送が設立した。

読売新聞社傘下の日本テレビホールディングス(HD)系のNNNは、東京・名古屋・大阪・福岡・札幌・広島・仙台の全国7ブロックを掌握している。

日本経済新聞社傘下のテレビ東京HD系のTXNは、東京・名古屋・大阪・福岡の全国4ブロックを掌握。

フジ・メディアHD系のFNNは、東・阪・札・広・仙の5ブロックを掌握している。

産経新聞はフジ・メディアHDの持分法適用子会社である。ネットワークのうち中京広域、北陸3県は中日新聞社が掌握している。

*「中日新聞東京新聞 のTVメディア支配」https://zukayer.hatenablog.com/entry/2019/05/08/144633

関係会社は最大12都道府県までという規制が、規制緩和により議決権3分の1以下の関係会社はカウントしないことが明確となった。親会社を含めたキー局のネットワーク支配力の差が出た。

RKB毎日とMBSを取違ミスのため張り替え。

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認定放送持株会社20190520b

 

衛星放送に未来はあるか?

AT&Tの衛星放送部門は去年120万人、デッシュ・ネットワークも110万人純減した。100万単位で加入者が減ったら産業崩壊だよね。

僕らは眼前で産業が消え去るのを冷静に見ている。
日本でも25年前に、1200万人が加入者していたポケベルが瞬く間に全国から消え去ったのを見た。

去年のスカパー、WOWOWはほぼ横ばいだが、ネット化を死にものぐるいでやらないと未来がない!

なぜ今年3月末の数字を使わないかというと、AT&Tは第1四半期から衛星放送単体のデータを公開しなくなったから。深刻さを増している。4社の比較のために昨年末のデータを使いました。

 

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2018年、日米衛星放送の加入者数
 

日米テレビ比較、米は360万純減、日本はほぼ横ばい

米国MVPD6社の第一四半期実績は、対前年比360万の純減。

日本の4社はほぼ横ばいになっている。

この大きな違いはどこにあるか。

 米国の地上波テレビ局は、すでにインターネット同時放送を行っているため、バーチャルMVPDに加入すれば、専用のケーブルもアンテナも必要なく、独自コンテンツとともに地上波を見ることができる。インターネット回線だけが必要だ。

 MVPDは光または同軸ケーブルの引き込みやパラボラアンテナの据付、セットトップボックスの設置など加入に費用がかかるため料金が高い。

バーチャルMVPDは、インターネットにつながったパソコン、TVがあれば即加入でき、設備費用の点から劇的に料金を下げることができる。

 日本では著作権問題もあり、地上波の同時再送信はNHKの災害放送などに限られている。地上波のインターネット再送信が普及しないと日本に大きな転換は起きないだろう。

 

バーチャルMVPD

Netflixは3月末6千万加入、対前年500万の純増である。

米国Fuluの3月末加入は2680万加入、日本国内では昨年末191万人(日テレIR情報)となっている。

*MVPD:マルチチャンネル・ビデオ・プログラミング・ディストリビュータ 

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2019年第一四半期日米テレビ比較